「先生は小さい頃からピアノの先生になりたかったんですか?」
という質問をたまに受けます。
違います。
ピアノしかやってこなかったから、それしかできることがなかったのです。
勿論嫌いでやっているわけではありません。ピアノは好きですし、自分のスキルを活かせるわけですから仕事としては満足です。子供が好きならなおさら楽しいし、生徒が上手になったりピアノが好きになってくれたら充実感も得られますし、沢山の喜びはあります。
ただ、ここを目指してピアノを続けてきたわけではありません。
私の小さい生徒さんの中には
「大きくなったらピアノの先生になりたい」
と嬉しいことを言ってくれる子もいたりしますが、実際なった子は今の所いません。
そして私の周りのピアノ講師の中にも「小さい頃からピアノの先生になりたかったんだよね」という話も聞いたことがありません。
ただネットなんかで見るとピアノの先生の養成所みたいな所もあるらしく、大人になってからピアノの先生になりたいからと、そういう場所で勉強されている話は読んだことがありますが少数だと思います。
皆ひたすらピアノが好きで「ああ弾けるようになりたい」「こんな曲が弾きたい」「もっと上手くなりたい」と目の前のことを夢中で取り組んでいるうちに学生時代(この場合音大を指します)は終わりますので就職の手段としてピアノ講師の道を選ぶのです。
これは他の分野でも同じだと思います。
フィギュアスケートや、バレエ、野球、サッカー、これらをやっている子供達は「スケートのコーチになりたい」「野球の監督になりたい」と夢を持ちながらスケートや野球をやる子はいないと思います。
皆「とにかく好きだから」「上手くなって活躍したい」など、プレイヤー目線でしかやっていないはずです。
その結果、スポーツなどは現役期間が短いですから引退後どうしようかとなった時に指導の道を考えるのが殆どだとおもいます。
一般的にピアノの先生というのは
「なんとなく優雅で楽そうな仕事。家で待機していたら生徒はやってくるし、ニコニコ笑いながら椅子に座ってピアノを教えるだけの仕事」というイメージを持たれているような気がしています。
実際その通りです。
ピアノの先生になるのに特に資格はないし、はっきり言って「自称」です。
大手の楽器店になると試験もあったりしますので少し話は変わりますが。
一人でも生徒がいれば「先生と生徒の関係」というものは成り立つわけですから、1人だろうが100人の生徒を抱えていようが先生は先生です。
ただあまり生徒の数が少ないと当然収入も少ないので、先生業の他にバイトしている人もいれば、諦めて全然別の職業につく人も沢山います。
ピアノの先生は飽和状態なので、ただ「ピアノが弾ける」というだけで生活が成り立つほど甘いものではありません。
先述した「ピアノの先生になりたいと言ってる子で実際なった子はいない」について、なぜいないのかというと
「ピアノの先生になりたい」が目標だと、目標値が低すぎるのです。
ピアノがそれなりに弾けるようになるために、膨大な時間とお金がかかっています。
コンクールで賞を取ったり、音大を受験し合格するレベルまで上達するには大変な努力と厳しいレッスンを乗り越えなければなりません。
ピアノが上手だからすぐ音大入れるかといえば、そう簡単なものではなく、受験で自分の力を発揮するためには、それまでに何十回とプレッシャーに耐えながら本番を踏んで鍛えられていって初めて受験でも力を発揮できるのです。
受験だって普通の本番と同じ、一回きりです。
緊張で失敗したらそれまでです。
それに耐えるモチベーションはどこからくるのかというとひとえに
「ピアノが好きだから」
「上手くなりたいから」
ここしかないと思います。
なので「いつもニコニコしながら子供にピアノを教える先生になりたいの」くらいの気持ちでは上記のことは乗り越えられないのです。
楽そうに見えますが、ここにくるまではそんなに簡単じゃないんですよ〜