外部の先生というのは、普段教えてる先生ではない先生の事です。
うちではコンクール時期になると、他の先生を呼んで生徒のレッスンを見てもらう事があります。他の先生といっても友人なので気心はすごく知れてる先生なのですが。
ここ数年は大学の同級生なので、歳も性別も同じ 、普段から生徒の事もよく話しているのでうちの生徒の扱いの心得もバッチリで、とても温和な雰囲気でした。
普段とは違う先生に見てもらうというのは実は子供達には非常に大切なことで、その内容がもし普段の先生と同じであっても意味があります。
普段の週1回習う先生は生徒にとって「お母さん」的な存在になります。
年齢とか学歴とかそういうのは関係ありません。
例えば
「ちゃんと片付けなさい」と母親に言われたら、わかっちゃいるけど「なにおー!」となると思いますが、いきなり来たお客さんに「いやー、片付け苦手でずっと放置してたら虫わいちゃってさー。やっぱり片付け大事だよねー。もしやってなかったらやった方がいいよー」と言われた方が子供の耳には残ります。
例えはちょっと変ですが、要は住んでいる場所も環境も違う人間から、同じ内容のことでも違う角度からアプローチしてくるということです。これが大事。
で、今回の先生はいつもの友人ではなく、男性の先生になりました。
もうね、こんな感じ
爆弾投下
悪い意味じゃないんです。
ただうちの気難しい生徒達には刺激が強すぎました。
まず男の先生も初めてだし、県外の先生も初めて。
海外生活も長いし、審査員やら音楽活動で全国渡り歩いているのでスケールも大きい。身体も大きいけど。
その全国の子供達を見て足りないものを伝えようとしてくれるわけですが、そうすぐには出来ない事を「この場で」なんとか教え込もうとするので当然しつこいレッスンになるわけです。
大抵外部の先生は必要な事だけ伝えて「後は先生お願いします」的な受け渡しだったりするのですが、この先生は違った。これは私も予定外でした。
「じゃあ後はうちでやっといてね」は通用しません。
うちに帰ってから同じように詰めてやる事はしないというのが今回の先生のお考え。
それには私も同感。やらないものなんです。
本来は私の仕事な訳ですが、それをやってくれました。その結果どうなったかというと、1人は泣き出す、1人は混乱してぶんむくれる、ということが起こりました。
まるで泥試合をみているかのような居たたまれなさ。
先生は全然怒ってなくてただ一生懸命夢中で教えているだけなんだけど、彼女達の混乱ぶりや怒りにも似た嫌悪感(元々大人の男性苦手な子)を私はひしひしと感じ、爆弾を落とされているような気分になっていました。
1人一番小さな生徒だけ疲れてフラフラになりながらも笑顔で乗り切りました。タフです。
全てのレッスンが終わったあと、私は若干途方に暮れていました。この後のフォローをどうすべきか。レッスンの内容はとても重要なことだったので有益だったということを伝えたい。ただ、全て先生の言ったことを肯定した物言いになると彼女達を否定する部分も出てくるのでそうではないことも同時に伝えたい。
普段食いしん坊の私が食欲が無くなるくらい悩みました。
案の定、1人は数日全くピアノを弾かなかったそうです。悪い意味で予想通りでした。
生徒は小学5年生の女の子なので年齢的にも色々難しいお年頃です。
とにかく誠心誠意、丁寧に丁寧に説明しました。
たまに来る先生としての役割。貴女達が嫌だと思っても大事な事は絶対伝えるという信念。もしそれで貴女達が混乱したり悩んだりしても後は知らないと思っているわけではなくて、私(ぴちち先生)が後は一緒に解決してくれるという信頼関係もある。
などなど。あとは、
「私(ぴちち先生)も去年までの先生も◯◯ちゃんの繊細な気持ちに寄り添って、その気持ちをいつも大切に思って接しているけど、そうじゃない先生もいる。むしろそんな事は無視して必要な事だけをきちんと言ってくれる先生だって実はすごく大切なんだよ」
と言う事も伝えた。
とりあえず、本番まであと1週間とか2週間とか関係なしに、習得するのに年単位でかかるようなこともまとめて言っていったので、ここも説明。
「あと一週間で直せる事と直せないことは私が整理する。一週間で直せないことは今はやらない。後のことはこれから半年、一年かけてじっくりやっていこう」と。
皆納得してくれました。一度こうやって混乱して悩んだおかげで色々考えるきっかけにもなったし、私も得る物がありました。とりあえず生徒達には強烈な経験になったので本当に良かったと思っています。
今回の先生は
「俺たまに劇薬になるみたい」と笑って言っていたけど、ほんとそうだったよ。