ピアノ講師ぴちち先生の五感

「発表会の服は?曲は?」「ピアノって認知症予防になるって本当?」「指使いって大事なの?」等、普段よく質問される事柄についてピアノ講師歴約20年の経験から綴っていきます。日々のレッスンで感じた事等も交えて。

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諦めなかった5歳児

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 5歳男の子。

頑張っています。

今日のレッスンの頑張りは録画でもして永久保存版にしておきたかったくらいです。

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今彼は「ひだりて」用の楽譜を使っていて、本日はラスト3曲でこの本が終わるというクライマックスの日でした。何やら意気込みを感じます。

「はやくピアノひきたいなぁ」

なんて普段言わないことを言っています。

「まずリズムやるからもうちょっと待って」

「えーまつの?」

「うん。リズムやるまで待って」

「わかった」

って、リズムやるのはキミなんだけどね。

 

で、普段はリズムの後にノートをやってからピアノなんですが、彼のやる気を削いではならないのでピアノをすぐやることにしました。実はこの時点で少し眠いのです。ピアノに来る前に公文に行っていたそうで、頭使ってお疲れ気味です。ぐずらずに来るだけでも偉いのです。

 

さあ残りのラスト3曲。

終わったら新しい本。今日絶対欲しいわけです。

2曲はなんとか弾けたのでマルにしましたが、ラストの1曲に手こずります。

何度やってもどうしてもどうしても弾けないので、花マルの花びらを一枚だけつけて

「今日は残念だけどまた今度にしよう」と言いました。

「いーやーだ」

 

「わかったじゃあもう一回」

 

動かない小さな指に命令するかのように懸命に動かしますが思うように動いてくれません。

「むつかしい・・・・」

と途方に暮れた目というか、完全に本日の彼にはキャパオーバーで目がキュッと小さくなってる感じがします。声にも力がありません。どう考えても今日は無理です。

お母様も「また来週にしよう」と促してますが、首を縦に振りません。

なので出来るとこまでやらせてみようと

「ああっ、惜しい!」「頑張れ!」なんて応援しながら横で見守ります。

 

でも何度やってもできないのに彼は諦めないし、私も「早くマルがほしい」という理由だけでマルと次の本をあげるわけにはいきませんので辛いところです。相手も真剣なので私も真剣に対応します。

「最初のところで間違えるのはドの後にラの準備してないからだよ。ドだけじゃなくてラのこともちゃんと考えてから弾くようにしてごらん」

完全にショートしかかっている彼に「最後の力を振り絞ってくれ」と祈るような気持ちでたたみかけます。

普段はここまでは言わないのですが、心の底から「マルが欲しい」と思っていますので、多少きつく言ったり、難しいことを言っても子供なりに真剣に聞きます。

こういったタイミングを逃さないことは非常に大切なのです。

毎回ある訳ではありませんから。

その甲斐あって、冒頭は弾けるようになりました。短時間で素晴らしい進歩です。

 

で、問題の最後。

小指でファ うん ファ うん

で終わるのですが、最後の最後のファが小指ではなくて、思わず反射的に親指で弾いてしまいます。ここは絶対に小指で終わって欲しいのであります。

子供は動かしにくい4指や5指を使うのを嫌がります。無意識に動かしやすい1〜3の指が飛び出します。ここで私が妥協してしまうとどんどん4指5指を使わなくなるので私も諦めません。

何度やってもできなくて

「むつかしい・・・ハハハハハ・・・」

変な笑いになっています。

決してふざけているわけではなくて、もう泣きたいのです。我慢しているのとはちょっと違って

泣きたい意思なんてないのに泣きそうになっている自分に困惑している感じ

というのでしょうか。私があまりみたことが無い反応です。

お母様も「あんたもう泣きたいんでしょ」と言っているのですが「俺もうよくわかんね」という表情。

鍵盤は彼の手汗で濡れています。その濡れた鍵盤を見たらお母様は泣いてしまうかもしれません。

一度鍵盤を拭きます。

もう次の生徒さんも来ているし、マルもあげたいし、というより何とか弾けて欲しいと祈りのパワー最大限にして念をおくります。最後に彼が弾くファを私が指差しながら

「小指だよ小指!」と言います。

彼はやはり最後反射的に親指が動いてしまうのですが、一瞬止まって小指に意識をシフトチェンジしてプルプル震えた手で小指を下にまっすぐ突き立てて、

「ファ」

と弾き終えました。

拍手喝采。

観客全員スタンディングオベーションのような盛り上がり。(本人&先生&お母さん&次の生徒の4名)

無事に彼は次の本をゲットしてこの日を終えました。

それはそれは大喜びしていました。

私も新しい本を渡せて嬉しい。

本当に良かった。

 

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