私は生徒に連弾をよく勧めます。
なぜなら
普段より良く練習するから
自分が弾けないと迷惑がかかる、という前回も書いた「合唱の伴奏」にも通じるものがあるのですがそれだけではありません。
「ちゃんとしたテンポで弾く」
「相手の音を聴く」
ということに自然と取り組んでくれるからです。前向きに。
そして何よりいつも1人で奏でるソロと違い、仲の良いお友達と一緒に演奏するのは楽しいので自然と弾く回数も多くなり、結果ピアノに触る時間が多くなります。
あと「1人で弾くより楽」というのもの大きな理由です。
労力は少ないのに音は多くて豪華な気分になります。
でもこれもソロを頑張っているからこそ感じられる感覚です。
小さい生徒さんなんかだと、発表会でもソロの演奏時間が極端に短かったりするので、メンバーさえ揃っていれば3人で連弾なんかもやることもあります。
と、ここまでは子供のお楽しみのお話。
これがコンクールや演奏会となればまた話は違ってきます。
この間連弾で演奏会に出演しましたが、組むお相手は遠方の為本番までに2回しか合わせる事ができませんでした。
しかも初めて会う方との連弾ですので相手の弾き方も全く未知の状態。
曲によってはあらかじめテンポを決めた所で意味が無い事もあるのでとにかくファーストコンタクトでお互いの情報を取り入れて「計画」を立てます。
まず最重要なのがお互いの手の音域が重なるときの手の位置の確認。
物理的な事なのできちんと決めておかなければならない再重要項目です。
それからテンポ、バランスとなってくるわけですが、これも2人の持ち味によってかなり変化します。
今回は「普段からセカンドタイプ」(連弾でいえば低音の方)の2人の組み合わせだったので、お互い合わせることは得意なのですが、下手すると
「合わせようとする相手に合わせる」
みたいな主役不在の演奏になってしまう危険性もあります。
で、こういう事も打ち合わせで「主役の箇所」も決めてしまいます。
あとは「呼吸の合わせ方」
これがなかなか難しくて、違う楽器同士だと0.5秒くらいズレていても平気なんですが連弾だとそうはいきません。
しかも最初にお互いの音で同時に和音で始まるような曲は、鍵盤に触れる指の高さから決める場合があります。
人によっては音を出す瞬間に数ミリ指を上げて打鍵する人もいれば、そのままストンと打鍵する人もいます。呼吸はあっていてもハンマーが弦に触れるタイミングが違えば音はズレます。
こういう事をある程度やって第一回目は終了。
第二回目までの合わせには打ち合わせしたことと、一回目のお相手のピアノの「余韻」を感じながら練習します。
そして二回目の合わせはひたすら弾いて、テンポや曲想をあれやこれややって、録画して終了。
次は本番さながらのゲネプロで出演者全員の顔合わせを兼ねて一度だけ演奏します。
ここで初めて第三者の意見を聞いて、課題を作ります。
で、本番を迎えるわけですがこの日のリハーサルで最終チェック。
会場とピアノが変わると音色やバランス、そしてペダルも変わるので微調整をします。
こんな感じで本番を迎えるわけですが、 お互いある程度慣れていないと少ない回数での本番は難しいかもしれません。
直接相手の感性に触れる事のできるアンサンブルはやはり大事ですし、楽しいものです。