今日4歳の男の子がエプロンをつけてきました。
「なにかおてつだいしたの?」
と聞くと
「ピアノのー」
と言っています。
さっぱりわかりませんが、小さい子相手の時には質問やツッコミはしないようにしています。
なぜかというと、質問したところでそれについて的確な解答が得られることがないことと、その解答に対してさらに質問にすることになったら失礼だからです。
後から来たお母さんに話をきくと
こどもチャレンジ?かなにかで、エプロンをもらってたまたまそれをつけたままピアノを弾いたらうまくいったから
スゴいエプロンだ!
と、なったらしいです。
なるほど。
それで「エプロンがピアノを弾く手伝いをした」ということで
「ピアノのー」が出て来た訳なのね。
ということでテンションが上がっているので何をやってもうまくいきます。
きっとこんな気分なのでしょう。
「今日のオレはマント(エプロン)をつけてるから何をやってもうまくいくはずだ!」
と、自分を信じて取り組んでいます。
自らノートにまるを書いて、線をひっぱって「ド」を上手に書きました。
「わー!今日すごく上手!1人でド書けたね!」
と先生も盛り上げます。
本人と私とお母さんの3人で拍手をしてさらに盛り上げます。
彼はおもむろにエプロンを引っ張りながらしげしげと眺めています。
「このエプロンすげえ・・」
という顔をしています。
この機会を逃してなるものかと、私は急いでピアノに向かわせます。
「今日の自分はできる」とものすごい信じているので、やる気も集中力も全然ちがいます。そうすると当たり前ですが、いつもよりできるんですよね。自分自身で潜在能力を引き上げて、そうとは知らずに歓喜する。
完全に自分の手柄をエプロンの手柄にしちゃっています。
「本当は自分の持ってる力なんだよ」と、もう少し大きい子には言うと思いますがこの場合は空気を読んでもう「魔法のエプロンだ」くらいの勢いで乗っかります。
実は根拠のない思い込みと言うのは、ピアノを弾く上でとても大事な要素だと思っています。現実は厳しいので、成長するにつれてこの思い込みは叩かれたり、潰されたりして打ち砕かれることが多くなっていきます。
しかし、
「俺は今ベートーヴェンと通じ合ってる」
「シューマンの声が聴こえる(私もちょっとそう思うときがある)」
「私はショパンの生まれ変わり(本当にこう言ってる友人がいます)」
と、思っている人が実際存在します。
そして本当にそう思って努力するので、練習もするし少しくらいのことではへこたれません。だって
ベートーヴェンと通じ合えたら楽しいじゃないですか
シューマンの声が聴こえたらもっと聴きたいとおもうじゃないですか
ショパンの生まれ変わりだと思っているならショパンは誰よりも素敵に弾けるはずだと思うじゃないですか
ちょっと変ですかね・・?
でもこういう思いってすごいパワーを出すのです。ピアノ練習は孤独な作業なので自分自身を鼓舞する能力は絶対に必要です。
そして、「人はどう思おうと自分はこうだ」という気持ちが強い人の演奏は説得力もあるし、引き込まれます。
これ、ピアノに限らず自分を奮い立たせることが出来る人は皆こんな感じなのでは・・?と勝手に思っています。